今治城の学芸員さんたちとともに、今治城図の調査をしました。先週のことです。
調査の目的は、保存状態と描かれている内容を確認することでした。
これは、正保年間(1644~1648)に、江戸幕府の命令によって各地の藩が作成した城絵図(正保城絵図)の一つと考えられ、今治城内の建造物や石垣の高さ、堀の幅などの精密な情報をはじめ、城下町や河川、海、周辺の高い山までも描かれています。
以前は復元天守内に常設展示されていましたが、資料自体や軸装の痛みがひどいため、しばらく収蔵庫に保管することになりました。現在は、殺虫のための燻蒸を行い、温湿度管理がなされた部屋で、静かに休ませています。天守内の展示室には写真パネルを置いているそうです。
ちなみに、正保城絵図のうち63鋪は国立公文書館が所蔵しており、これらは昭和61(1986)年に国の重要文化財に指定されています。この今治城図が幕府に提出した正本であるのか、その控えであるのかは、軸装を外して、裏書などを調査しないとわからないそうです。
いずれにしても、今治城や城下町の往時のようすを知るうえで、大変貴重な資料に間違いないありません。今治が誇る至宝と言っても過言ではないでしょう。
「正保城絵図が無いのはさみしい。」
と、展示を望むお客さんの声はよく聞くのですが、できる限り良い状態で、長く後世に渡って守り伝えていくことを考えれば、価値を損ねることなく、きちんと修復がなされ、展示環境が整った上で公開されるのが良いと思います。整った展示環境とは、防災、防犯はもちろんのこと、資料に適した照明、温度、湿度がちゃんと管理された状態です。もちろん防虫も必要ですね。
これらの文化財の修復は高額ですし、専門家のご意見を伺って、適切な方法を検討しなければいけません。したがって、すぐに公開というわけにはいかないと思いますが、ご理解をいただければ幸いです。
当館もこの絵図の調査や保存について、微力ながらできる限りの協力をしていきたいと思います。(K)