2013年4月2日火曜日

保存か、公開か

以前のブログで、今治城の城絵図の紹介をしました。
http://suigun-staff.blogspot.jp/2013/02/blog-post_6.html





長年、展示公開されてきたこともあり、表装などの痛みが激しいのので、現在は温湿度が管理された収蔵庫で静かに休ませています。

先日、今治城などで活動中の今治地方観光ボランティアガイド(http://www.oideya.gr.jp/v-guide/)のみなさんが、今治城正保城絵図を実際に見ながら、城の勉強をしたいということで、私も少しお手伝いをさせていただきました。

今治城の学芸員さんや元館長さんの説明を受けながら、大変熱心に勉強されていました。

その中で、この城絵図を今治城でできるだけ早く公開してほしい、という声があがりました。今治城の至宝を来客にお見せすることができないという、ガイドとしての寂しい気持ちはよくわかります。

しかしながら、現在の保存状態のまま、しかも環境の整っていない展示ケースに戻すことは、資料の劣化を早めることになるのは明らかですので、それを行うことはできません。やはり今治城を誇りに思うみなさんですので、このことにはご納得をいただけたようです。

その上で、価値を損なわないような適切な方法での修復と、展示・保管環境の改善が第一で、さらにレプリカ(複製)を作って、それを常設展示し、本物は期間を限定して公開したらよい、といったようなご意見もいただきました。

保存か、公開か。

地域の宝を守り伝えることを第一と考えるならば、その保存が保障されて初めて、公開が可能になるというのは言うまでもございません。まったく公開しなければ、貴重な資料があることすら、将来的には忘れ去られてしまう可能性もあります。活用することによって、市民に資料の重要性を伝えることができ、結果的に保存への理解がより一層深まると思います。

まずは保存のためにできることをやった上で、可能な範囲で活用していく。このことは、お金もかかりますし、学芸員を中心に、その体制も充実させなければいけません。ハードルは高いのですが、市民の方の理解を得ながら、その道を模索する必要があると思いました。(K)