2013年1月23日水曜日

達筆すぎて読めんわい

以前も告白しました通り、私は古文書が読めません。しかし、地道に勉強をすれば、少しずつ読めるようになるそうです。今年こそは!と思いながら、はや何年過ぎたでしょうか・・・。

そんな腰の重い私を尻目に、当館のせんどうさん(当館ミュージアム・パートナーの愛称)たち数名は、2週間に1回、博物館に集まり、自主的に古文書の勉強会を行っています。

「達筆すぎて読めんわい。」
そう言って笑いながらも、熱心に勉強されています。


この勉強会は、当館のスタッフで唯一古文書が読める田中顧問を講師として、古文書解読の基礎を楽しく学ぼうという試みで、昨年4月から始めました。


将来的には、当館保管の『村上家文書』のうち、まだ未解読の史料が多い、近世文書の解読などにもチャレンジしたい、と意気込んでおられます。私も負けずに頑張らなければいけませんね。

さて、古文書の勉強会に関連して、私がとても感銘を受けたエピソードを一つ紹介したいと思います。

東日本大震災で甚大な被害を受けた地域のひとつ、陸前高田市。市立図書館には、岩手県指定文化財の『吉田家文書』(江戸時代)が保管されていて、地元の陸前高田古文書研究会の方々が20年以上もかけて、地道にその解読を行ってきたそうです。全95冊のうち、93冊まで解読を終え、あと少しで完了でした。

3月11日。図書館は津波で水没し、図書のほとんどは流出してしまったそうです。重要書庫に保管されていた『吉田家文書』の原本は、水に浸かりながらも奇跡的に流出を免れ、レスキューのみなさんの手によって救出されました。古文書を見つけた瞬間、会のメンバーは涙を流して文書を抱きかかえた、とある新聞に書いてありました。

厳しい現実もあったそうです。解読に携わった方のうち3人が津波で亡くなり、また20年以上かけて解読し、完成間近だった読み下し文のほとんどが流出してしまったのです。

しかし私が感銘を受けたのは、この厳しい状況でありながら、最初から解読をやり直すことを即座に決意されたことでした。これまでやってきたことを放り出すわけにはいかない、と。
地域の歴史を大事にして、後世に伝えたい、後継者を育てたい、そんな強い思いがあって、もう一度最初から、という道を迷わず選ばれたのだと思います。

陸前高田市のように、地域の歴史や文化財を愛し、伝えようとする人たちが増えるために、博物館は何をしたら良いのでしょうか。当館のせんどうさんたちが行っているこの勉強会が手がかりを与えてくれるかもしれません。(K)


☆この記事は、当時の新聞・テレビ等の報道や下記の本などを読んで書いています。

【参考文献】
国立歴史民俗博物館編2012『被災地の博物館に聞く 東日本大震災と歴史・文化資料』吉川弘文館