2013年1月4日金曜日

特別展を振り返る

改めまして、新年あけましておめでとうございます。
村上水軍博物館は、本日4日より新年の営業を開始いたしました。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、新年を迎えるにあたり、少し昨年を振り返りたいと思います。
12月16日、特別展『海の来島・山の久留島』が終了いたしました。会期中にご来館いただいたお客さまは約8500人。多くのお客さまにご覧いただき、大変うれしく思います。ありがとうございました。


いつものことですが、会期終了の頃には、次の展示の準備や、能島城の発掘調査報告書の執筆に追われ、余韻に浸ることもできず、ああでもないこうでもないと苦労して作り上げた展示を、迷いも悩みもなく撤去する、本来なら寂しさを感じる瞬間なのでしょうが、その余裕すらありません。


久留島家文書、久留島氏肖像画を
撤収した展示ケース内。
次は、2月にひな人形が並びます。

ただ、今回は少しだけ、誰もいない展示室に一人でこもり、構想段階からの日々を振り返ることにしました。

冒頭の「開催にあたって」で公言した目的は達成できたのだろうか、お客さんに伝えたかったことは伝わったのだろうか、そもそもお客さんにとって良い展示とはなんだろうか、このスタイルを続けて良いのだろうか、自己満足になっていないだろうか・・・。

さまざまな思いが頭をめぐり、展示室の静けさと相まって、自信は揺らぎ、不安にすらなりました。





当館は、昨年、開館8周年を迎え、来館者40万人を達成することができました。これまで多くの展示を担当してきましたが、自らの展示を批判的に振り返ることは、十分に行ってこなかったように思います。

構想開始から約一年半。まずは先学を紐解き、さらに近年の能島城の研究成果をヒントに、新しい来島村上氏、来島城像が描けないか、そんな意気込みでスタートしました。

調べれば調べるほど、久留島家文書など素晴らしい文化財が今も残っていることに感動し、その一方で来島村上氏、来島城には謎が多く、意外にも研究の余地が多く残されていることに驚きました。現状ではこの2つが魅力ではないか、と。

私が感じたこの魅力をお客さまにどうやったら伝えられるのか、そのことに主眼をおいて展示やシンポジウムを行ったつもりでしたが、改めて振り返ってみると、こうすれば良かったなと、反省すべき点も多く見つかりました。

さらに地元の今治、あるいは久留島家ゆかりの玖珠町の方々であっても、来島村上氏、久留島氏の歴史や文化財の存在について、知らないことが多いということにも気づいたのも大きな収穫でした。その理由は、それを学ぶ場や、文化財に触れる機会が少なかったことが一因なのではないでしょうか。

そして思ったことは、この特別展やシンポジウムで終わりにしてはいけない、ということ。今後も情報収集や研究を進め、新しい情報を常ににお客さんに発信し続けることが重要で、海事都市今治の礎とも言える素晴らしい文化財を将来に渡って守り伝えていけるように、当たり前のことかもしれませんが、学芸員としてそんな仕事がしたい、すべきだ、と改めて思いました。

個人的な思いを並べて恐縮ですが、過去を振り返り、新たな気持ちで新年に挑みたいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。(K)