2020年5月16日土曜日

能島村上家伝来ののぼり おうちで四国のミュージアム「魔除け」


四国各県のミュージアムが、ツイッター等で所蔵資料などを紹介している「#おうちで四国のミュージアム」。


今回のテーマが魔除けということで、今回はこちらの資料をご紹介😊





こちらは、能島村上家に伝来する絹製の幟(のぼり)で、


くれないじしろひきりょうにかみのじもんののぼり
紅地白引両上字紋幟

といいます。 


な、長い名前……😫💦

そういう時は、分解して意味を考えてみましょう。

 色ので、引両(横線)に上字紋(㊤)がついた

ということです。

なるほど、見たまんまの名前。

大分色あせていますが、当時はもっと鮮やかな紅花色だったと考えられています。


村上海賊ミュージアムには、先ほどの画像をのせた長いものと、もう一つ短いものがあります。


短い方



さて、この幟の一体どこが「魔除け」なのか🤔??



竿に通すために輪っかになっている布部分を(ち)といいます。





そこに注目して見てみると……🔍🤔








 何か模様の刺繍が……😲!!!


この模様が「魔除け」の呪符!



江戸時代初期の軍書『甲陽軍鑑』(巻第16・44品)の中では、幕の乳について

「幕の乳へ入れる事、臨兵闘者皆陣烈在前、怨敵消滅、悪魔降伏、怨敵消滅、天地和合、皆令満足、過去現在未来、此を以て名字・仮名・実名・判まで入れるなり」

と書かれています。

怨敵消滅」「悪魔降伏」という言葉からも、乳に呪符的な性格があるんだなということが何となくわかるとおもいます。




先に載せた乳の4種類の刺繍、今回は以下のような呼び方をします。


 五芒星 

一筆書きした星形で、魔除けとして使われる紋様です。みなさんご存知、陰陽師と言えばあの人!な安倍晴明が考案したといわれ、「安倍晴明判」や「晴明桔梗」などともいいます。

 九字紋 

縦4本、横5本で9本。この線は、護身の呪文「臨兵闘者皆陣列在前」の九文字を唱えながら空中に指先で描く形を表していることから「九字紋」といいます。


この五芒星と九字紋は、魔除けとしてよくセットで用いられています。

三重県志摩地方の海女さんは、今でもこの2つの紋を魔除けとして身に着けているそうです。(「セーマン()ドーマン(九字)」と呼ぶらしい。)


 叶紋 

願いが「叶う」?


 分銅紋? 

分銅なのか、「×」なのか…🤔

「分銅」は、秤で重さをはかる時に用いるおもりです。
銀行の地図記号(⛻)でも用いられていますね。
この分銅は、如意宝珠や打出小槌などの宝を集めた模様である「宝尽くし」にも描かれているなど、縁起のいい模様の一つです。

では「×」。

江戸時代中期に伊勢貞丈が著した軍陣故実書『軍用記』の「旗之事」では、

「乳の針目は  如此にぬふなり」
「縫め ⮽ 如此するはまんじ 卍 此の心なり」

という記述があります。

旗の乳は ⮽ のように縫い、 ⮽ 吉祥のしるしである「卍」を意味しているということですね。

同じく『軍用記』の中の「幕之事」では、同じく乳の縫い目について、以下のような記述もあります。


能島家伝来の幟の乳の刺繍には、表には玉留めはありませんが、裏は転換点ごとに玉留めされているようです。



さて、刺繍された呪符をそれぞれ見てきましたが、今度はその並び順を見てみましょう。

能島村上家に伝来している幟以外にも乳に呪符を刺繍しているものはありますが、隅に「」「」「九字紋」を配し、その他の部分を「」「×」にするのが一般的なようです。



では、能島村上家伝来の幟は…?




長短共通
・3つの隅は「九字紋」
・上部の乳は、右から「」→「叶」→「

長幟
・左側の乳は、上から「叶」→「」→「」(最後は「」を飛ばしている)

短幟
・左側の乳様は、上から「叶」→「」→「


3つの隅に九字紋で、それ以外の部分は3種類が繰り返しで入れられているようですね。


この配列の意味は……?


まだまだ謎です。教えて詳しい人😭




これらのような魔除けの呪符は、幟以外にも、城の石垣や寺社の鬼瓦などでも用いられているそうです。

お城の石垣でよく刻印されているものがありますが、今回出てきたような紋様をぜひぜひ探してみてくださいね!



今回ご紹介した幟は、村上海賊ミュージアム2F、常設展示室最後の部屋「村上家記念室」で展示しております。

お越しの際はぜひ「乳」に注目してご覧ください😊


コロナ退散!!!

 M